Boulangerie Nogami 野上 智寛シェフ
一つのことを追求する性分から職人の道を選び、パンの世界へ
勉強はできる方ではなく、体育と図工が得意な子供でした。絵を描くことも好きで、工作などの授業は楽しかったですね。高校生の頃はレスリング部で、正直食に興味もありませんでした。ただ、進路を考えた時に、物事を掘り下げて探求していくことが好きなタイプなので、営業職より手に職をつける方が合っていると考えて職人の道に進むことを決めました。とはいっても目標とする職人像はなく、たまたま目にしたパン屋さんの求人に応募して就職したのが本当のところです。 高校卒業後に就職したパン屋さんでは窯を担当しましたが、1日中ひたすらバゲットを焼いていました。一日で2～３千本こなしていましたが包餡も経験できなかったので、これでは職人にはなれないと考えて、岡山・倉敷のドンクに転職しました。そこで出会った店長の進藤さんには非常にお世話になりました。当時一人暮らしで朝が弱く、なかなか起きられなかった私を、進藤店長が毎朝起こしにきてくださったんです。今では考えられないですよね。仕事面では厳しくも愛情のある方で「仕事はマニュアル通りにやればいいってもんじゃない」と生地の状態に寄り添って丸めたり成形するというパン職人の基本姿勢を教えてくださいました。パンは誰でもつくれますが、美味しくつくることはとても難しいということに気づいたのもこの頃でした。
「技術を皆に！」仁瓶利夫さんから学んだこと
3年程働いた頃、倉敷のドンクが「ジョアン」に業態変更することになり、クロワッサンなどの折り生地も全て店舗で仕込むことになりました。この時は新しいことができるとワクワクしましたね。どうやったら美味しくつくれるのかと探究心がうずいたのを覚えています。「ジョアン」としてオープンするときに当時技術指導部で活躍されていた仁瓶利夫さんがお店に入り込んで指導してくださったんです。この時が仁瓶さんとの初めての出会いで短期間ではありましたが、仁瓶さんと仕事をご一緒できたことはとても貴重な経験となりました。仁瓶さんの製パン知識の豊富さとテクニックは刺激的で、こういう考え方もあるんだと、お話ししたり所作を見ることで感じ取ることができました。他にも仁瓶さんは視察で倉敷に来てくださるたびに現場に足を運んでくださり、幅広い技術を教えてくださいました。営業が終わった後に飾りパンを教えてくださるなど、日々の営業の垣根を超えてたくさんのことを学ばせていただきました。 ドンクではお客様の声も届く場所でパンをつくるようになったので、その声を聞いて「今度はこうしてみよう」と日々試行錯誤するようになりましたし、「美味しかったよ」という一言がとても嬉しく励みになることだと知ることができました。
台湾ドンク出店のために台湾へ。そして手仕込みの真髄を知る
ドンクで修行を続けていた6年目に、当時岡山県の５店舗程度を統括していた所長の高木さんが、台湾ドンクの店長として抜擢されたんです。そのときに高木さんが「野上、一緒に台湾に来い！」と声をかけてくださったことがきっかけで１９９２年に台湾に来ました。海外への憧れもありましたし、言葉は話せませんでしたが好奇心が上回り、迷いや不安はありませんでした。ただ、当時の私は知識や技術もまだまだ未熟でしたから、台湾でパンのことがわからないと困ると考えて、パンニュースさんで販売している本を片っ端から購入して台湾に渡りました（笑）。 台湾ドンクの立ち上げに関しては海外出店ということもあって相当力を入れていました。どれくらいかというとレイモン・カルヴェル先生と、イタリアで数々の賞を受賞しているオリンド・メネギン氏が台湾にいらして直々にパンとパネットネーをご指導いただくほどでした。レジェンドである二人の手仕込みの真髄を目の前でみることができたのは幸運でしたし、かけがえのない体験をさせていただきました。 台湾のお店がオープンする前には…………（続く）
Boulangerie Nogami
●所在地：台北市士林區福國路5號
●人口：台北市約270.5万万人
●開業年：1999年3月1日
●定休日：無休
●従業員：22人（販売10人・工場12人）
●営業面積：55坪（売場15坪・工場40坪）
●日商：平日約37万円/土日祝55.5万円 ※1元=約3.7円（2017年11月現在）
●1日あたりの客数：平日約500人/土日祝約750人
●客単価：200元
●オーブン台数：2台（8枚4段・4枚3段）※別途コンベクあり
●ミキサー台数：3台
●パンの種類：60～70種類（生地25種類）
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