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株式会社カワ 代表取締役 川 良弘 

 




最初は建築関係の仕事で独立を考えていた20代前半
 

私はもともと18歳から21歳まで東京で建設業界に従事していて、測量士をやっていました。私の両親が商売をやっていたので、小学校を卒業したら中学校に通うのが当たり前のように、大人になったら独立開業することが至極当然だと考えていました。そして、測量事務所開業の為には司法書士の資格をとった方が有利だと考え、22歳の時に大学に行くことを決心しました。

ここで転機がありました。それは、大学に行くために親戚のケーキ屋さんで、住み込みのアルバイトをしながら勉強する生活を送ったことです。もちろん大学に合格することが目的だったので、10月から本腰を入れて受験勉強を始めたのですが、2月の試験では不合格。少し準備期間が足りなかったのです。「もう一年頑張ろう」と奮起して、再び住み込みでケーキ屋さんのアルバイトをしながら、勉強をする日々が始まりました。4月から10月まで、朝は5時から昼過ぎまで仕事をし、その後、勉強する生活を送っている中で、「ケーキの仕事が私に向いているのかな?菓子屋をやろうかな?」と心境の変化がありました。ただ、このタイミングで「菓子屋になる」と宣言したら、「勉強を諦めて、逃げたんや!」と後ろ指さされることがわかっていましたし、そう言われるのが嫌だったので、「大学受験に合格して、菓子屋になる!」と決意し、有言実行しました。



未熟な技術を補う為に考える力、パンとの出会い


大学在学中の23歳の時に、今は存在しないのですが、京都の「フランス菓子ナカムラ」さんで寮に入って修行しました。25歳の時に、西日本洋菓子コンテストが京都で開催されて、私もエントリーしました。過去10年分の業界誌を読みあさり、過去の入賞作品を調べ、コンテストの「傾向と対策」を見出せたのが良かったのでしょう。修行3年目で技術も乏しい私の作品が3位に入賞したのです。その後、27歳大学卒業のタイミングで、本場の現場を見てみたくヨーロッパ修業に行きたかったのですが、当時は労働ビザがなかなか降りず断念。その代わりにイースト発酵菓子の知識を深める為に8か月ドンクさんにお世話になることになりました。実はこれがパンとの初めての接点ですね。

ドンクさんでの経験を経て、兄弟子から「和菓子屋の『三万五千石』がベーカリー部門『デンマーク』を立ち上げるからチーフでやらないか?」と声をかけていただきました。ケーキは5年余りやっていましたから少しは自信があったのですが、パンに関しては知識と経験が不足していたので、セカンドチーフであれば行かせてくださいと返答しました。その間に別のパン屋さんで2か月研修を受けて準備をしていたのですが、オープンの1週間前といったタイミングでお願いしていたチーフが来られなくなり、私がお店を任されることになったんです。そこから1年間そのお店にお世話になるのですが、その1年の経験はとても大きな経験でした。毎晩夜中まで雁瀬大二郎さんの本を、真っ赤になるまで線を引いて、がむしゃらにパンのことを勉強して、お店で実践の日々。ものすごく過酷な1年間でしたが、あの時の経験が今のすべての技術のベースになっていると思います。パン作りに関して悩んだ時も「こういうことも考えられるかもしれない」と柔軟に考えられるようになりましたね。



独立資金の使い道と開業する土地選び


「デンマーク」を経て私が29歳になった当時、都心部では人口流出でケーキ屋は都心でやっていくことが厳しくなっており、ドーナツ化現象が起きていました。パン屋ではスーパーや駅中での「ついで買い」が主流でした。そんな時代に和歌山の田舎で路面店舗「ヨーロッパのお菓子とパンの店 欧風菓子カワ」として独立開業しました。自己資金は80万円で国金から800万円を借り、770万円で内外装と機械を揃えました。自己資金も車を購入して消えてしまい、家賃は10万円。良い意味で腹をくくれましたね。やるしかありませんから。

場所は地元・和歌山県湯浅町。関西空港もできる前でしたから知人には大阪に出た方がいいのではないかと言われました。人口が少ないこともわかっていましたが、知らない土地で苦労するより良いと思いこの地で開業しました。今振り返ると「両親も友達も応援してくれる」という万が一の保険と、「いつまでも頼ってはいられない。独り立ちしないといけない」という、相反する気持ちが混在する思春期のような心境でしたね。ただ、幼い頃から「和歌山で一番になる!」と友達には言って回っていましたし、最初から5~6店舗は展開したいと構想を描いていましたから、1号店は絶対成功したいという思いが強くありました。

当時の湯浅町のパン屋や洋菓子店事情は、人口1万8千人の町で学校給食をバックボーンに、あんぱんやクリームパンなどを販売する昔ながらのパン屋が4店舗、ケーキ屋が6店舗という状況でした。そこで私は6尺のショーケースを使用してケーキ25%、パン75%の商品展開で勝負しました。開業してからは1ヶ月の睡眠時間は50時間とれていなかったと思います。その後も起きているのか、夢なのかわからない状態が5年続きました。もはや機械と化していましたね。これだけ没頭できたのも、独立する時に両親から「お前は友達が多いから、遊んでばかりになるんじゃないのか?」と言われて、私の反骨精神に火が着いたからかもしれません。

独立して3年目に駅前店、4年目に御坊店を開業し、本店を含め3店舗で4億円を売上げました。そこから15年間で、ベーカリー部門を12店舗、セントラル工場、レストラン3店舗という規模になっていました。

パンへの「こだわり」は食材のバランス

「こだわれば、こだわるだけ美味しくなる」と私は考えています。これは食材のバランスの追求で、私の中で「こだわる」と「凝る」は違うと考えています。例えば…………(続く)

 

パン工房カワ  梶取店

●所在地:和歌山県和歌山市梶取162-1
●開業年:2023年4月6日(木)狐島店より移転&リニューアルオープン
●営業時間:9:00~19:00
●定休日:火曜日
●従業員:25人(販売15人・製造10人)
●営業面積:43.8坪(売場19.1坪・厨房+調理場18.3坪・その他6.4坪)
●日商:平日52万円/休日73万円
●客単価:平日1,253円/休日1,468円
●オーブン台数:1台
●ミキサー台数:1台
●パンの種類:150種類(生地40種類)

 

 


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