パンは発酵の映し鏡
Interview Close Up 杉山 大一シェフ
杉山家は戦時中から発酵と縁深い家系
私の祖父は発酵学の学者(イーストドクター)で、戦時中にイーストを研究して、4 5イーストから戦闘機の燃料であるバイオエタノールをつくっていました。祖父が発酵の世界で生きてきたと考えると、なんだか感慨深いですね。また、この土地で杉山製パンを始めたのも定年退職した祖父でした。祖母からは『パンは個体発酵、酒は液体発酵だ』とよく言われていたことを覚えています。
生い立ちを思い出すと、私は生まれてから物心つくまで常にパンに囲まれて成長しました。しかも住み込みで働いていた家族同然のパン職人がいましたから、パンだけでなく職人にも囲まれた生活をしていました。こういう生活環境ですから物づくりが好きでしたし、見よう見まねでパンを作っていましたね。
当たり前ですが私の父が2代目で、祖父から継承した卸の仕事を守り続けてきました。私が引き継いでから、卸の仕事だけでなくお客様の顔が見える仕事がしたいと考え、工場直販の延長というイメージでベケライダンケをオープンさせました。

日々、是勉強。実体験に勝るものはない
今でも勉強中で、この先も勉強に終わりはないと思いますが、日本では学校を卒業してから何件かのパン屋さんでお世話になりました。これらのお店に関しては、私なりの働くポイントがあったんです。賛否両論あると思いますが、そのポイントは労働条件が悪いということ。自分が悪い部分を身を以て体験すれば、これがまずいのだとわかる訳で、自分が店を持った時に活かそうと考えていました。時効だと思うので話しますと、労働時間は3時~20時の18時間拘束で、最初に出勤して閉店まで仕事をしていました。業務は製造はもちろん、店番もや...
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