倉田氏×西川氏×伊原氏 対談インタビュー
今、パン屋が抱えている問題
人手不足や原価高騰、最低賃金の値上がりなどパン屋さんが抱える問題は幅広い。それを解決するための方法はあるのか――。値上げをしない先に待つパン屋の未来とは?
西川 「夢が持てる」業界でなければね。若者が「NO」と言った時点で業界は衰退していってしまうから。そうなれば、後継者もいなくなってしまう。昔はよく使われた「修行」という言葉が通用しなくなってきた今だからこそ、我々世代が変わっていかないとね。人件費を安く抑えようと賃金を抑えてしまうと、良い人材が入ってこない、さらに離職者が増える、そうなればオーナーが苦しくなるという悪循環になってしまう可能性が高い。
伊原 同意見です。パン屋さん同士でお給料の話になった時に〝最低賃金ベース〟での話にしかならないのは、問題のひとつではないですかね。スタッフの子が「このままここで働いた先に収入は上がるだろうか……」と不安になるようであれば、その子は人生プランが立てられない=パン屋さんを続けていけないとなってしまう。うちの店でも、数年働いて30~40歳となった時、これからの人生を「どうしようか」と考え始める子もいます。そういう子の不安を取り除いてあげられる業界でありたいですね。今の時代、働く人達にとって一番効率が良いのは「仕事量が少なくてお給料が良いこと」。なので働く人に「生産性」を求めるのには難しい面もある。基準を作ってそれをクリアしていくことで給料が上がっていくなどのシステムや様々なところで改革が必要となりそうです。あとはやはり値上げですね。
西川 この状況を打破するには「パン自体の値上げ」しかないと私は思います。昔は、ざるそば1枚と食パン1斤の値段は一緒だと言われてましたが、今ではざるそばでも1枚400~600円のお店が多い。それに比べて、パンの値段はほとんどと言っていいほど変わっていませんからね。他業界が値上げをしているからパン屋も、というわけではなく、業界を衰退されないために値上げは必要だと思います。
パン屋はなぜこの30年値上げをしてこなかったのか
この30年で様々なものの値上げが進みました。食パンに関しては数円単位と大幅な値上げは行われていません。そこから学ぶ「値上げ=善」であるという考え方とは。
倉田 パン屋に関しては値上げする必要がなかったんだろうね。出来なかったわけではなく、日常的に食べてもらうものだから値上げをしてこなかったという。あとは、以前は今と違って人手も足りていたし、作れば作っただけ売れるという時代でしたからね。
伊原 よく考えてみると、他の食料品と比べて製品が完成するまでにかなりの手間と時間のかかるパンが、30年間ほとんど値上げをしていないというのもおかしな話ですね。お客様がパンに対して「手がかかる」というのを理解していない可能性もありますけど。
西川 そうですね。その手間をどうお客様に伝えていくのかも、値上げを実施するにあたってひとつヒントになりそうです。ただ我々のような街のパン屋は…………(続く)
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