ベーカリーパートナー
商品購入サイト

ベーカリーパートナー商品購入サイト

過去に発行されたベーカリーパートナーは、ご注文で取り寄せることも可能です。

Moulus à la Meule 本杉 正和シェフ

ベーカリーパートナー36号シェフインタビュー

ブノワトンの扉を開けた瞬間、僕の人生は変わりました

中学2年生の時には、すでに「僕はパン職人になる」と決めていました。小さい頃から母の隣で料理やお菓作りを手伝うことが好きで、自分の作ったもので人を幸せにできるなんて、そんな楽しくて素敵な仕事はないと思ったんです。その中でもパンは特別で、具材や材料を自由に決められることが楽しく、簡単には習得できないことが面白く、何より友達や家族に食べてもらって喜ばれることがとても魅力的でした。高校生になるとパン屋巡りを月に10~15件ほどしていたのですが、その時に出会ったのが「ムール ア・ラ ムール」の前身でもある「ブノワトン」でした。ブノワトンの扉を開けた時「小麦って本来はこういう香りがするんだ!」と思ったんです。大袈裟かもしれませんが、その瞬間に私の人生が変わったと言っても過言ではありません。ブノワトンで販売されているパンはハード系ばかりでした。見た目が若干黒いものが多く、家に買って帰ると家族からは「これ焦げてない?」と言われたように記憶しています。でも食べてみると、噛めば噛むほど小麦の香りがしてきて、味が徐々に変わっていったんです。 このパンとの出会いは私が持っていたパンの概念を変えてくれました。それからはブノワトンで働くことを目標に、自分が今何を学び、何をすべきかということばかりを考えて過ごしていました。高校卒業後はそのままブノワトンに就職することも考えましたが、当時はパンについて独学の知識しかなく、「果たして通用するのか」という不安もあり専門学校で学ぶことを選択しました。その専門学校ではパンの技術よりも理論の方に重きを置いて教えてくださり、パンをさらに面白いと思わせてくれるきっかけにもなりました。卒業した今でも関係は続いており、時折、依頼を受けて生徒たちに国産小麦について講演会をさせていただくなどしています。 専門学校を卒業後は、技術の習得のためホテルの製パン部門に就職しました。「仕込みから焼成までを2年で習得する」という目標を掲げ意欲的に働いて、2年後、私はブノワトンの門戸を叩きました。


今の自分に繋がる全てをブノワトンが残してくれた

私の人生を変えたものとして、もうひとつ、ブノワトンのオーナー・高橋幸夫氏との出会いがあります。ホテルを退職しようとした時にはブノワトンの求人はすでに終わっていたのですが、そこで働くことしか考えていなかった私は、「とりあえず話を聞いてほしい!」と懇願しました。その時、オーナーの高橋氏に取り次いでくれたのが、当時スタッフとして働いていた今の妻でした。その時、私は22歳だったのですが、彼女は私のことを「30歳過ぎくらいの男の人です」と伝えたらしく、「30歳過ぎのやつはいらん!」と断られそうになりました(笑)。そんなアクシデントはあったものの、無事に私の「ブノワトンに対する想い」を聞いていただき、「そんなにウチのことを想ってくれているなら」と働かせてもらえることになりました。 ブノワトンのパンの一番の良さは、咀嚼するごとに小麦の風味を感じ、徐々に感じる味が変化するところにあります。当時そんなパンを食べたのは初めてでしたし、日常食としてずっと食べ続けられるパンはこういったパンだと思いました。ブノワトンのパンの秘密は、「国産小麦」と「粉を生かすパンの製法」にあります。使用している小麦は高橋氏が自ら「湘南小麦プロジェクト」と題し作付けから製粉までを行う想い入れの強いものです。もちろん小麦粉だけではなく、ひとつひとつの材料への想いを大切にしており、そういった想いがパンを買いに来てくれるお客様に響いていたんじゃないかと思います。 私がブノワトンで働き始めてから5年程たった時、高橋氏は病に倒れ41歳という若さで亡くなりました。この出来事はブノワトンや湘南小麦プロジェクトに関わる全ての人を悲しませました。それでも彼が残してくれたたくさんの教えや言葉は今でも多くの人の心に、そして私の中にも息づいています。 特に一番心に残っているのは、私が独立するか悩んでいた時に言われた「お前がやらなきゃ誰がやる!」という言葉です。これはその言葉通り「やるしかないだろ!」という意味でもあるんですが、私には「自分の人生の中でやりたいと思うことがあるのなら、それは自分でやるしかない。他に誰かが変わってやることは出来ないよ」と言われたように思いました。 高橋氏が亡くなった翌年の3月、ブノワトンの閉店が決まり、私は「お前がやらなきゃ誰がやる!」という高橋氏の言葉に後押しされる形で、その翌月、ブノワトン跡地に新しくムール ア・ラ ムールをオープンさせました。ブノワトンの頃から通ってくださっているお客様や、高橋氏が立ち上げた「湘南小麦プロジェクト」、湘南小麦を製粉する製粉所「ミルパワージャパン」など、高橋氏の残してくれたものが今の私にとってかけがえのないものとなっています。

パンに関わる全ての人を繋ぐパン屋

当店では全てのパンに湘南小麦を使用していて、それは全て私自身の手で製粉したものです。湘南小麦とは神奈川県湘南地区で契約栽培し、低速回転で丁寧に石臼で製粉した小麦の総称です。その特長のひとつとしてあげられるのが粉の挽き方です。 大手の小麦粉に比べ挽き具合が荒く、粉と呼べるギリギリのラインで製粉をしています。そのため粒が大きいので咀嚼して味が出るまでに時間がかかりますが、噛めば噛むほど小麦の味が口の中に広がるパンが出来上がります。インパクトを与えられるパンではありませんが、飽きのこない仕上がりです。 高橋氏から学んだことの一つとして…………(続く)


Moulus à la Meule(ムール ア・ラ ムール)
●所在地:神奈川県伊勢原市板戸645-5
●立地:小田急線「伊勢原駅」から徒歩で22分
●人口:伊勢原市約10万人
●開業年:2010年4月
●定休日:火・水・木曜日
●従業員:4人(社員2人・アルバイト2人)
●営業面積:69坪(売場12坪・工場38坪・駐車場19坪)
●日商:22万円
●オーブン台数:2台
●ミキサー台数:2台
●パンの種類:80種類 (生地10種類)


ベーカリーパートナー36号の購入はこちら>>
パン速報 BP
お役立ち情報 BP
ベーカリーパートナー
セミナー BP

定期購読

2 ヶ月に1 回発行で年間6 冊お届けいたします!
毎号ご注文いただく手間がなく非常に便利になります。
継続してお読みになる方には、
便利な年間購読もございますのでご連絡ください。