ベーカリーパートナー
商品購入サイト

ベーカリーパートナー商品購入サイト

過去に発行されたベーカリーパートナーは、ご注文で取り寄せることも可能です。

ビゴの店 フィリップ・ビゴシェフ

ベーカリーパートナー25号 シェフインタビュー



パン職人で厳しい父

パンに囲まれた幼少期


 

私の父は祖父の時代から続くパン屋の2代目だったため、私の隣にはいつもパンがありました。勉強はボチボチで、父からは「パン屋の仕事を早くやれ」と言われ、8歳の時にはバヌトン(パン発酵用布張かご)の掃除を手伝い、10歳で生地の分割をこなしていました。生まれてからずっとパンの香りに囲まれて育ち、父がパンを焼き、母がそれを売る環境だったので、自分もゆくゆくはパン屋になるのが当然だと思っていました。

義務教育を終えた私は、14歳で父の店で働きはじめるのですが、父とはいつも些細なことで喧嘩していました。「掃除はしっかりやれ。手は抜くな!」と基本姿勢を叩き込まれました。1年ほど経った頃、詳しく覚えていませんが、父がなにか私に責任を取らせようとしたんです。加えて父が私を叩こうとしたので、若かった私も「叩くなら、俺も叩くぞ!」と声を荒げました。すると父は「あのドアが見えるか!?」「出て行けッ!」と一喝。私はそれに「出てってやる!」と返して、配達のチップを貯めて購入した自分のバイクに乗って、すぐに家を出ていきました。その足で地区のパン組合に向かい、パン屋さんの求人がないか確認したところ、運良くその日の内に就職先を見付けることができました。しかも店が入っているビルがオーナーの所有物だったので屋根裏に住み込みで働ける好条件付き。でもさすがにしばらくはよく眠れませんでした。毎朝5時から勤務でケーキづくりが主な仕事でしたが、そこで1年半ほどお世話になりました。この頃、父の具合が悪いと母から連絡があって、たまに父の店に顔を出すようになり手伝いはじめました。

 

修行時代
資格と兵役


 

17歳の時メゾン・コンファンというお店に見習い(アプロンティ)として入ったのですが、もっと高度な技術を学ぶ為に、働きながら週に1~2回国立製粉学校に通いました。ここでは皆さんもご存知のレイモン・カルヴェル先生に出会い、パン職人と菓子職人の職業適性証(CAP)を取得しました。

19歳の時に軍隊への入隊命令を受け、内地軍に配属されました。食堂の管理の仕事を担当したり、新兵教育を受けましたが、私は悪いミリタリーでしたね。声にこそ出せませんでしたが戦争には反対でしたし、平和の気持ちを持ち続けていましたから、鉄砲の勉強をする時間は決まってお腹が痛いとか頭が痛いとか、仮病を理由に逃げていました。他にも冷蔵庫の鍵を持っていたので、こっそりクロワッサンを作って仲間に振るまったり、キャンディーをポケットに忍ばせていたりね。

でも一生懸命やることはやりましたから、軍隊から表彰されることになったんです。しかし平和を信念とする私はそれに違和感があって表彰を辞退しました。そしたらミリタリーの刑務所ですわ(笑)。70日間も拘留されることになったんですよ。ミリタリーの刑務所で辛かったことは冬でも毛布1枚しかないことでしたね。真っ暗で一晩中寒くて眠れないし、ネズミもいるし、うん、怖かった。拘留中に任期の完了を迎えることになるのですが、除隊まで数日となった時に上官が「70日間も入っていてどう思うんだ!?」と私に聞いてきました。「察してください(ご判断ください)」と返答したのが上官には偉そうに見えたんでしょう。これが原因で通常より兵役が5日延長になりました。

 

カルヴェル先生の信任を
得ていざ日本へ


 

兵役を終えてからしばらくして、私が21歳の時に母がこの世を去りました。心にぽっかり穴が開いてしまって、仕事に本気で向き合うことができず、複数のお店でパンの仕事や菓子の仕事をしていました。この頃は製粉学校を卒業していたのですが、時々カルヴェル先生を訪ねていました。光栄なことにカルヴェル先生の授業のアシスタントをさせていただくこともあり、「日本の見本市でフランスパンを焼く人を募集しているからやらないか?」と誘われたんです。母が健在だったら間違いなく反対されていたでしょうね。経験不足であったことは自覚していましたから、パン屋の仕事をしていた従兄弟に相談にしたんです。従兄弟の「いいじゃないか!行けよ!」という後押しで決心するのですが、当時の私にあるのは積極性だけで、人に教える程技術も無いし、心の中で「どないしよ~」と思っていました。カルヴェル先生からは2ヶ月間みっちり指導を受けました。

この時の私には知る由もなかったのですが、カルヴェル先生は当時「こんな若手のビゴを日本に行かせて大丈夫なのか?」と関係者からなじられていたそうです。しかし先生は「指導者で生まれる者は誰もいない、指導者になるのだ。少々時間がかかったとしても、ビゴはそうなっていける器ではないだろうか」とおっしゃってくださったのだそうです。私はそれを来日から10年程経った時に聞いたんです。それはそれは感激しました。












ビゴの店 芦屋本店
SHOP DATA
●所在地:兵庫県芦屋市業平町6-16
●芦屋市人口:約9.5万人
●立地:JR線「芦屋駅」から徒歩10分
●定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休み)
●従業員:21人(販売8人・工場9人・事務4人)
●営業面積:30坪(売場18坪・工場12坪) 
●日商:約25万円
●客単価:約800円
●オーブン台数:4台 ●ミキサー台数:3台
●パンの種類:65~70種類



ベーカリーパートナー25号の購入はこちら>>

パン速報 BP
お役立ち情報 BP
ベーカリーパートナー
セミナー BP

定期購読

2 ヶ月に1 回発行で年間6 冊お届けいたします!
毎号ご注文いただく手間がなく非常に便利になります。
継続してお読みになる方には、
便利な年間購読もございますのでご連絡ください。